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日商簿記3級

【1問1問】簿記3級「現金過不足」は“仮置き箱”だと思えば、もう怖くない

つまずくのは、たぶん1か所だけ

日商簿記3級・初学者向け・約7分・更新 2026-06-04

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正直に言うと、私は「現金過不足」が長いこと苦手だった。借方なのか貸方なのか、雑損なのか雑益なのか、毎回うっすら自信がなくて、問題を見るたびに小さく身構えていた。同じように「なんか苦手…」と思っている人、けっこう多いと思う。

でも、ある日きちんと向き合ってみたら、拍子抜けした。現金過不足の本質は、たった一つしかない。「原因が分かるまでの、仮置き箱」。これさえ腹に落ちれば、あとはどの問題も同じ動きの繰り返しだ。今日はオリジナルの4問を、手を動かしながら一緒に潰していこう。

そもそも“現金過不足”って、何者なんだ?

最初に、考え方の土台だけ作っておく。ここが分かると、後の問題が全部ラクになる。

簿記の世界では、帳簿に書いてある現金の残高より、実際に金庫を数えた金額(実際有高)のほうが正しい、というルールがある。だってお金は、現に手元にある額がすべてだ。帳簿のほうが間違っているなら、帳簿を実際に合わせにいくしかない。

ところが、ここで困ったことが起きる。帳簿を直すには、相手科目(=反対側に書く勘定)が要る。でも「なぜズレたのか」は、その場ではたいてい分からない。原因不明なのに仕訳は切らないといけない。——そこで登場するのが現金過不足だ。「理由は後で調べるから、いったんここに置いとくね」という、住所が決まるまでの仮置き箱。これが現金過不足の正体だ。

白猫

白猫:“実際に合わせて現金を動かす”のが先。理由はあとから埋めればいいんだ。まず箱に放り込む、くらいの気持ちでね。

【問1】帳簿は1,000円、でも数えたら900円だった

では1問目。現金の帳簿残高は1,000円。ところが、実際に金庫を数えたら900円しかなかった。100円、どこかへ消えている。まず、どう仕訳する?

さっきのルールを思い出そう。正しいのは実際の900円のほうだから、帳簿の現金を100円減らす。現金が減るときは貸方だ。そして相手は原因不明——だから仮置き箱の「現金過不足」を借方に置く。

(借)現金過不足 100 /(貸)現金 100

ポイントは、最初に「現金をいくら動かすか」を実際有高に合わせて決めてしまうこと。相手が何かは、まだ考えなくていい。空いたほうに現金過不足を入れるだけだ。

【問2】後日、原因が判明した(通信費の記帳もれ)

数日後、調査の結果、「あの100円は、切手代(通信費)を記帳し忘れていたものだった」と判明した。原因が分かったということは、仮置き箱から本来の住所へ、荷物を引っ越しさせるタイミングだ。

問1で借方に置いた現金過不足を、今度は貸方に書いて消す。そして空いた借方に、正しい科目である通信費を入れる。

(借)通信費 100 /(貸)現金過不足 100

これで現金過不足の残高はゼロになった。最初に借方へ放り込んだ100円を、反対の貸方で打ち消すイメージだ。仮置き箱は、空にして返すのが基本になる。

黒猫

黒猫:現金過不足は“通過点”であって、住所じゃない。原因が分かったら、すぐ正しい科目へ引っ越させる。これが鉄則だ。

【問3】決算まで、原因が分からなかったら?

では、調べても調べても原因が分からないまま、決算日が来てしまったら? 仮置き箱を空にできないまま、年度を締めることになる。さすがに「原因不明」のまま帳簿に残し続けるわけにはいかない。

そこで最後の引っ越し先として用意されているのが、雑損と雑益だ。問1のように現金が足りなかったケースでは、現金過不足が借方に残っている。これを、費用である「雑損」に振り替えて締める。

(借)雑損 100 /(貸)現金過不足 100

お金が足りなかった=会社としては損をした、と考えれば「雑損」につながる。原因は分からずじまいだけど、帳簿はこれできれいに片づく。

【問4】今度は逆。お金が“多かった”ら?

ここまで来たら、もう一つのパターンも見ておこう。今度は逆で、帳簿が900円なのに、数えたら1,000円あった。100円、なぜか多い。あわてず、同じ手順でいく。

正しいのは実際の1,000円だから、帳簿の現金を100円増やす。現金が増えるのは借方。相手は不明だから、貸方に現金過不足を置く。

(借)現金 100 /(貸)現金過不足 100

そして後日「受取手数料の記帳もれだった」と判明すれば、貸方に置いた現金過不足を借方で消して、正しい科目へ。

原因判明の仕訳はこうなる。

(借)現金過不足 100 /(貸)受取手数料 100

もし決算まで分からなければ、今度は貸方に現金過不足が残っているので、収益である「雑益」へ。お金が多かった=ちょっと得した、で「雑益」と覚えればいい。

(借)現金過不足 100 /(貸)雑益 100

白猫

白猫:気づいた? 問1〜4、ぜんぶ同じ動きを左右ひっくり返しているだけなんだ。覚えることは、本当は1セットしかない。

【問5】一部だけ原因が分かった——本番っぽい“合わせ技”

基本は押さえた。ここからは、本番でちょっと差がつくパターンを2つだけ見ておこう。まずは“合わせ技”だ。

問1の状況(借方に現金過不足が100残っている)から続ける。後日の調査で「100円のうち、60円は通信費の記帳もれ」と分かった。でも、残りの40円は、決算まで結局わからずじまい。こういう“半分だけ判明”は本番で普通に出る。あわてず、分かったぶんと分からないぶんを、別々に処理すればいい。

まず、判明した60円を正しい科目へ振り替える。

(借)通信費 60 /(貸)現金過不足 60

次に、決算で残った40円を雑損へ。

(借)雑損 40 /(貸)現金過不足 40

これで現金過不足はぴったりゼロ。60+40=100で、最初に置いた箱がきれいに空になったのを確認できる。難しそうに見えて、やっていることは問2と問3を順番にやっただけだ。

【問6】決算日にいきなり見つけたら、箱は使わない

もう一つ、引っかけで頻出のルール。期中に現金過不足を立てていなくて、決算日にいきなり現金のズレを発見した場合は、現金過不足という箱を経由しない。その場で直接、雑損か雑益にしてしまう。

理由はシンプルだ。仮置き箱は「あとで原因を調べて、正しい住所を決める」ための一時置き場。でも決算日に見つかったズレには、もう“あとで”が存在しない。あとがないなら、最初から最終置き場に直行でいい。

(借)雑損 100 /(貸)現金 100 (決算日に現金が100足りなかった場合)

「現金過不足を使うのは“期中”。決算日当日に発見したら、箱を飛ばして直接 雑損・雑益」。ここはセットで覚えておくと、引っかけにやられなくなる。

つまずくのは、たぶんこの1か所だけ

最後に、私がずっと混乱していた“1か所”を白状しておく。それは「現金過不足を借方に置くのか、貸方に置くのか」だ。ここだけ、毎回ふわっとしていた。

でも、もう迷わなくていい。順番を固定すればいいだけだった。①まず現金を、実際有高に合わせて増やすか減らすか決める。②現金過不足は、その“空いたほう”に置く。自分から現金過不足の置き場所を考えにいくと沼にハマる。先に現金を確定させれば、残った側に入れるだけだ。

流れにすると、毎回これの繰り返しになる。

  • ①実際有高に合わせて、現金を増減させる(多ければ借方、少なければ貸方)
  • ②相手が不明なので、空いた側に「現金過不足」を置く
  • ③原因が判明したら、反対仕訳で現金過不足を消し、正しい科目へ振り替える
  • ④決算まで不明なら、残った現金過不足を雑損(足りない側)か雑益(多い側)で締める

よくあるつまずき、先回りで2つだけ

締めの前に、私や周りがよく引っかかった疑問を2つ、先に潰しておく。

Q. 現金過不足って、結局なんの仲間(資産? 費用?)なの? ——どちらでもない、が答えだ。原因が分かるまでの一時的な勘定で、最終的には必ずゼロになって消える運命にある。だから「これは資産か費用か」と分類しようとしなくていい。“いずれ消える付箋”くらいの位置づけで十分だ。

Q. 問題文の「帳簿」と「実際」、どっちに合わせるのか毎回迷う。 ——合言葉は一つ、「現金は、実際にある額が正義」。数えた金額(実際有高)のほうが正しくて、帳簿をそれに合わせにいく。ここを逆にした瞬間、借方と貸方が全部ひっくり返って崩壊するので、ここだけは絶対に間違えないでほしい。

覚え方の最後の仕上げ。決算で残ったとき、足りなくて損した気分なら「雑損」、多くて得した気分なら「雑益」。この語感だけで、もう取り違えない。

どうだろう、4問ぜんぶ同じ動きだったはずだ。「仮置き→振替→締め」、この3ステップさえ手が覚えてしまえば、現金過不足はもう、身構える相手じゃなくなる。あとは本物の過去問で、この流れを何度かなぞってみてほしい。たぶん、思っていたよりずっとあっさり解けるはずだ。

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