FP3級の6分野の中で、「これは試験が終わったあとも一生使うな」と思った論点がいくつかある。その筆頭が、NISAだ。
試験に出る。しかも自分の資産形成にそのまま効く。一粒で二度おいしい。……のだが、初めて学んだときの私の感想は「数字、多くない?」だった。120万だの240万だの1,800万だの、似た桁の数字が並んで、覚える気が失せる。
でも、整理してみたら気づいた。覚える数字は、実質4つだけ。120・240・360・1800。今日はこの4つを、○×と三択の4問で頭に入れて帰ってもらう。なお、制度の数値は2026年4月1日の法令基準日に合わせて点検した内容だ。最新の正確な情報は、必ず金融庁や金融機関の公式情報で確認してほしい。
前提:ふつう、運用の“もうけ”には約2割の税金がかかる
NISAのありがたみは、「ふつうがどうか」を知らないとピンとこない。
株や投資信託を売って出たもうけ(譲渡益)や配当には、原則として20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)の税金がかかる。ざっくり言えば、10万円もうかったら約2万円が税金で消える。
NISAは、この税金がまるごとゼロになる“非課税の箱”だ。箱の中で出たもうけには課税されない。制度の本質はこの一文に尽きる。あとは「箱の大きさ」の数字を確認していくだけだ。
【問1】○×:NISA口座内で生じた売却益や配当には、20.315%の税金がかかる
ウォーミングアップ。さっきの話そのままだ。
答えは×。NISA口座内の売却益・配当・分配金といった運用益は非課税。そもそも課税されないのだから、20.315%もかからない。
学科の○×は、こういう「制度の本質を逆から聞く」問題がよく出る。「非課税である=○」も「課税される=×」も、結局同じ一つの理解から答えられる。
【問2】年間いくらまで投資できる?——120と240
新NISAには2つの枠がある。コツコツ積立向けのつみたて投資枠と、まとまった投資もできる成長投資枠だ。年間の上限はそれぞれいくらか。
答えは、つみたて投資枠が年120万円、成長投資枠が年240万円。そして2つの枠は併用できるので、合わせて年360万円まで投資できる。
覚え方はリズムでいい。「120、その倍の240、足して360」。1つ覚えれば残り2つは計算で出る。私はこれを「1・2・3の法則」と勝手に呼んでいる(120→240→360で数字の頭が1・2・3になる)。
【問3】生涯では、いくらまで?——1800
年間の枠とは別に、一生涯で非課税のまま保有できる上限がある。いくらか。
答えは1,800万円(生涯非課税保有限度額)。ただし注意がひとつあって、そのうち成長投資枠で使えるのは1,200万円まで。1,800万円をぜんぶ成長投資枠で埋めることはできない。
試験で狙われるのは、まさにこの「うち成長投資枠1,200万円」の部分だ。「生涯1,800万円・成長だけなら1,200万円まで」をワンセットで言えるようにしておくと、ひっかけに強くなる。
【問4】○×:NISAの非課税保有期間は、最長20年である
最後はこれ。昔の制度の記憶がある人ほど、ひっかかる。
答えは×。2024年に始まった新制度では、非課税で保有できる期間は無期限になった。制度そのものも恒久化されている。「いつまでに売らないと非課税が切れる」という時限爆弾は、もうない。
かつての制度には非課税期間に期限があったため、古いテキストやネット記事には期限つきの記述が残っている。FPの勉強で古い教材が危ない、という典型例がここだ。教材は必ず受験年度対応のものを使ってほしい。

白猫:数字の整理はこれだけ。年120・240・併せて360、生涯1800(成長は1200まで)、期間は無期限。声に出して3回読めば、たぶんもう忘れないよ。
2つの枠、中身の違いをひとことで
数字の次に問われやすいのが、つみたて投資枠と成長投資枠の「中身の違い」だ。これも一言ずつで持っておけばいい。
つみたて投資枠は、長期の積立・分散投資に適した、一定の基準を満たす投資信託などに対象がしぼられている。コツコツ積み立てる人向けの、いわば“厳選コース”だ。
成長投資枠は、上場株式や投資信託など、対象がぐっと幅広い(ただし一部対象外の商品もある)。個別株を買いたいならこちらの枠、と覚えておくと整理しやすい。
ついでに、新制度らしい特徴をもう一つ。NISA口座の商品を売却すると、その分の生涯枠は翌年以降に復活して再利用できる。生涯1,800万円は“使い切り”ではないわけだ。細かい仕組みまでは3級では深掘りされにくいが、「売ったら枠が戻る」という方向だけ知っておくと、○×で迷わない。
ひっかけ注意:NISAの“損”は、税金の世界では存在しない扱い
最後に、ひっかけとして狙われやすい弱点の話。NISAは万能ではない。
通常の課税口座どうしなら、A株の利益とB株の損失を相殺して税金を減らせる(損益通算)。ところが、NISA口座で出た損失は、他の口座の利益と損益通算できない。翌年以降に損失を繰り越す繰越控除もできない。
理屈はこうだ。NISAの箱の中は「税金の世界の外」にある。もうけが非課税になる代わりに、損もまた、税務上は“なかったこと”になる。いいとこ取りはできない設計だ。学科の○×では「NISA口座の損失は損益通算できる→×」の形で繰り返し出題されるので、ここまでセットで持って帰ってほしい。
試験のあとも、この知識は使える
FP3級の学習でNISAを押さえると、ちょっといいことがある。ニュースや銀行の窓口で聞く話が、急に「読める」ようになるのだ。
「つみたて枠だけで月10万円まで積み立てられる」(120万÷12か月)も、「夫婦なら生涯3,600万円分の非課税枠がある」(1,800万×2人)も、今日の4つの数字から自力で導ける。資格の知識が生活の道具に変わる感覚は、FPという資格のいちばんおいしいところだと思う。
ただし繰り返しになるが、制度は改正されることがある。実際にお金を動かす前には、金融庁の公式情報や金融機関の最新案内を必ず確認すること。試験対策としても、本番前に当サイトのFP3級演習で「金融資産運用」分野を回して、知識の定着を確かめてほしい。
新NISAは「もうけに税金がかからない箱」。覚える数字は、120・240・360・1800の4つだけ。